2−0.研究支援:日々の問いかけ

(1) 背景


 1) 背景
大学院生・博士研究員さんの研究進まない
→大学院生・博士研究員さんの研究指導で困る
→大学院生・博士研究員さんも困る。とほほ…。
 2) 基本的な原因
  @落とし穴 落とし穴に落ちる。
研究進まない。とほほ…。
 3) 研究プロセスの
   原因・パターン
  @ゴール設定 ゴール設定の段階で間違ったゴールを設定している。
 ・研究計画立案
 ・各プロセス(個々の実験、試料分析)
→やることに内容ない。(その実験・試料分析に何の意味があったの?)
→内容がないことをしても結果出ない。とほほ…。
  A方針 方針・アプローチの仕方を間違える。
知識不足のまま研究を進めようとする。
→問題を解決できない。
→実験結果に基づいた議論ができない。
  B会話・議論 話しても内容がない。
言い訳ごまかしを連発する。
→実験、分析、論文読解をやらない。
研究進まない。とほほ…。
  C論文読解 学術論文を読んだからといって内容を理解しているわけではない。
  D論文執筆 学術論文を書いたからといって内容のあるものを書けるわけではない。
→掲載拒否になる。とほほ…。
 4) 結末
  @やる気を失くす やる気を失くす。

(2) 目的・目標


 1) 目的 研究活動の支援を通じた学生さん・博士研究員さんの成長
 ・研究能力のレベル上げ ・進捗の把握 ・信頼関係の構築
 2) 目標
  @全体をとおして
   論理的思考能力 論理的思考能力の向上(GPDCAサイクル)。
   科学システムの理解 科学システムの全体像の把握(お金、優秀さ、評価、学術論文を書くことの重要性)。
 【参考図書】
  ・科学者として生き残る方法(生態系としての科学、128-135ページ、F. ロージ・T. ジョンストン)
  A研究内容
   初期段階 ちゃんとした研究(学部、修士課程を想定) → 基本のレベルアップ
   中期段階 しっかりした研究(修士課程を想定)。
   後期段階 素晴らしい研究(博士課程を想定)。

(3) 方針と気の持ちよう


 1) 基本方針
  @やらない人対策 以下の負の思いに答える。
 ・できるはずがない ・やりたくない ・面倒臭い ・なぜそこまでやる必要があるのか ・目標が多すぎる
  A考えてもらう 経験学習サイクルの習得・定着を支援し、学ぶ力を強化する。
 【参考図書】
  ・OJT完全マニュアル(「考える余地」を与える「ガードレール」型の指導を行う、36-37ページ、松尾睦)
  B宿題を出す 週一で宿題を出す。
 (週5日働くことを前提にする)
 1日目:宿題を出す。締切を明確に伝える。
 2-4日目:質問を聞く。(Do you have any question?)
 5日目:締切。
 締切の次の日:宿題へのコメント・助言を伝える。
  C任せる 学生さんに任せる。
他の大学院生・博士研究員・教員さんに実験・分析手法を教えてもらう。
専門知識。○○を知っておくことが必要という。勉強は任せる。
 【参考図書】
  ・任せる技術(小倉広)
  D自己成長を薦める スキルを改善する能力を改善することを勧める。
自学自習
することを勧める。
本・ウェブサイトを読むことを薦める。
 2) 具体的方針
  @分からないと言う 言っていることが分からないと言う。I cannot understand what you are saying.
  Aコミュニケーション
学術論文を読んで理解してと言う。
理解のポイントは、仮説・結論を支持する根拠。
根拠が間違いでない(もっともらしさ)の証拠・根拠。
Does evidence support conclusion?
学術論文の書き方の本を渡す。
理解のポイントは、仮説・結論を支持する根拠。
根拠が間違いでない(もっともらしさ)の証拠・根拠。
Does evidence support conclusion?
 3) 気の持ちよう
  @心構え 腹を立てない
こんなことも知らんのかと思わない。
教えるのが仕事。教えることがあることは良いことだ。教えたことを無視する人にはダメだとしつこく教える。
  A精神衛生に
   気を付ける
助言を理由もなく聞いてくれない場合は、相手に伸びない責任がある。
指導教員が必要以上に責任を背負う必要はない。
自分を追い詰めないようにする。
  B余所の学生が… 隣の芝生は青い。

(4) 口頭・メールでのコミュニケーション


 1) 目的 定期的なコミュニケーション(Communication)をすることで、
 ・研究の方向性確認したり、
 ・学生さんのGPDCAサイクル助言する。
 2) 方針
  @コミュニケーション 少しでいいから会話メールする。出来れば1日1回。
  【参考図書】
  ・任せる技術1日1回、週1回、164-169ページ、小倉広)
  A注意点 取り調べをしない。
 【参考図書】
  ・任せる技術取り調べ尋問するな、170-175ページ、小倉広)
 3) 話す場面・機会
  @普段の生活 ・通勤・通学途中 ・廊下 ・大学食堂 ・セミナーの待ち時間 ・セミナーの後
・学生さん・博士研究員さんの居室(頼みごとのとき) ・自分の居室(議論、頼まれごとのとき)
  A食事、歓送迎会、
   行事
・お昼ご飯 ・お疲れ会(金曜日の夕方にビール) ・歓迎会 ・送別会
・お祝いの会(還暦) ・新年会 ・忘年会
  B研究中 ・実験室(作業のついでに) ・分析中(助言しに行く、判断基準が重要)
 4) 会話
  @進捗の把握 いつもの流れ
 ・こんにちは(Hello.) ・調子はどう?(How's (it) going?) ・何か質問ある?(Do you have any question?)
 ・何をしたの?(What did you do?) ・何を習ったの?(What did you learn?)
 ・次は何をするの?(What will you do?) ・どうするの?(How will you do?)
 【参考図書】
 ・任せる技術1日1回、週1回、164-169ページ、小倉広)
  A責任 責任もってやってる?(Are you responsible for your research?)
  B教わり方 大学教員から助言をもらえるのは良いことだ。
助言をもらわないのは損だ。有効活用した方が良い。
  C将来の希望 博士課程に進学したいの?

(5) 紙媒体でのコミュニケーション


 1) 張り紙
  @目的 研究過程・データ・分析・解釈の可視化
 →議論のネタにする。
  A方針 居室の戸研究内容をまとめた紙を貼る。
 A4サイズ1枚。フローチャートにして主要な図を載せる。
 Really? How much? などを書く。
 【参考図書】
  ・任せる技術(「全自動厳しい装置」、202-207ページ、小倉広)
 2) ポスター 学会などのポスター発表で使用したポスターを廊下に貼っておく。
 3) 学術論文 受理された学術論文を廊下に貼っておく。

(6) 研究室セミナー(ミーティング、Weekly Meeting)


研究支援:研究室セミナー」を参照。

(7) 質問


 1) 目的 研究の質を上げる(レベル上げ用)。
 2) 宿題の後の質問 学術論文原稿・学術論文を読んでも重要なものが分からない。
Why is this important?
What is important?
Please consider it by yourself.
I should not tell you my answers because you will not consider what is important by yourself.
 3) 質問 それやる意味あんの?
問。何の研究してるの?What do you study?
答。とある鉱物のある物性。

問。誰が研究してるの?Who?
答。僕です(僕らです)。

問。なんでその鉱物を研究するの?Why do you study it?
答。地球の中にいっぱいあるから。

問。どこにいっぱいあるの?Where is it?
答。深さ○ km から△ km まで。

問。ホントにいっぱいあるの?Really?
答。過去の研究ではそうなってるよ。

問。過去の研究ってどんなの?What is the reference?
答。地球の中の物質を高温高圧にしたもの。

問。いっぱいあると何で重要なの?Why is it important?
答。その鉱物が全体的な物性を支配するから。

問。なんでその物性を研究するの?
答。重要だから。

問。なんでその物性が重要なの?
答。(粘性率)物質・熱輸送を支配するから。

問。物質輸送ってなに?
答。沈み込むスラブ、ホットプルーム、マントル対流とか。

問。なんで分かってないの?
答。観測的・実験的な研究が難しいから。

問。なんで観測が難しいの?
答。深いところのことだから。

問。なんで実験が難しいの?
答。圧力が高くなるから。
  大きな試料が作れなかったから。

問。なんで難しいことが出来るようになったの?
答。技術開発したから。

問。誰が出来るの?
答。今のところ僕(僕ら)だけ。

問。それが分かったら何がいいの?
答。○ km での粘性率変化。
  マントル対流。
  地表付近のマントルの変動。
   大規模地震後の重力。
   氷河後のリバウンド。
  深発地震の謎。
  現実的なシミュレーション。

問。それが分かったら誰が喜ぶの?
答。